リトルフォレストを作りたいと思ってね。
私が、私の好きなように。
私の好きなものだけを集めて、
私のしあわせを、作るよ。
*
小さな畑と、
少しの稲作と、恵みの多い山と。
ヤギとにわとりを放して、
山の果物の木の手入れをして、
縁側に寝転んで気ままに本をめくって、
自然のなかでくるくる遊ぶふーを眺めて。
(安心してください。もちろん素っ裸ですよ。)
*
春には裏の竹林で筍を掘って、
ジリジリの夏は梅をもいで梅干しに。
秋は栗を拾って栗ごはんを炊いてね、
冬は、それまでの恵みを少しずつ食べて春を待つの。
あとは、山椒の木を植えるんだ。
今年は山椒仕事が間に合わなかったから。
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朝、土鍋でごはんを炊いて、
あつあつの味噌汁と、卵焼き。
昼は、おにぎりふたつと、おかずを少し。
卵を焼いたり、魚を焼いたり。
夜は、結構食べちゃうよ。
お腹が空いてると眠れないタイプだからね、
*
何もなくても、理由をつけて
ふーとパーティーをして。
踊って、歌うの。
好きなうたを、でたらめに。
びっくりするくらい、大きな声で。
ひっくり返って笑って、たくさん夢の話をするの。
ふーとの毎日を、
おめでとうと、ありがとうだらけにして。
夜は、ふーが目をこするまで本を読んで、
寝相最悪大魔王のふーに顔を蹴られながら眠るの。
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私もふーも、
たまにこじらせる系だから、
気が向かないときはとんでもない喧嘩もして。
ふーは色々な言葉を知ってる分、
怒るとすごいのよ、やばいのよ。
私以上だから、とんでもないよ、うちの娘。
*
長雨も、爆発する夏の暑さも、
とにかく太りまくる秋や冬も。
いいじゃない、全部私の責任で。
全部ふーと決めて生きてくの。
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私が良くて、ふーが良くて、
それが誰も不幸にしないなら、
私はそうやって生きていきたいよ。
*
ふーが、持て余すほどの喜怒哀楽の中にいて、
呼んだら素直に膝に座ってくれる今、
そうやって暮らしたいんだよ。
そうそう、あのね、
ここ一週間くらい、
行ったり来たりしている命を見ていて。
*
それが、
武蔵なんだけども。
もう長くないだろう命を見続けるのは、
うまく息ができなくなるくらい、
こうも、苦しい。
*
何日か前に、
ふーに、もうすぐ武蔵の命がなくなることを、
話して。
命がそう長くないことを話す、自分の言葉の意味に、
話しながら、泣いて、泣いて、泣いて。
*
自分の命をこんなにも泣かれる武蔵は、
どんな気持ちなんだろうと、思って。
毎朝の少しの変化に、
喜んだり、苦しくなったり、
たくさん名前を呼んで、なでて。
*
野良着姿の和子さんや、素っ裸で水遊びをするふー、
気だるげな私。
私たちのふつうの、なんでもない暮らしの様子を武蔵に見せようと。
*
武蔵の命が今ここにあることも、
見送ることになるだろうことも、
覚悟ほど立派なものではないけれど、
私たち家族のこの夏のこととして、
覚えておこうと思います。
ふー、ちゃんと見ておきなさいよ。
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